【よく聞くけど分からない単語】IoTってなんだろう?

はじめに

あなたは「IoT」という言葉はご存知でしょうか?

2015年頃からGoogleでの検索回数が伸び続けており、今でも世界中で注目度の高いITトレンドワードです。
しかし、IoTって実際どういったものか良く分からないと思っている方も少なくないのではないでしょうか。

そんなあなたに今回は、

  • IoTってどういうものなのか
  • なぜ今注目されているのか
  • 何に使われているか

について解説していきます。

また、それに付随したIT関連の情報やIoTの問題点についても触れていきたいと思います。
内容は盛りだくさんですが、前提知識が不足していても理解できるように書いているので是非最後まで読んでください。

目次

IoTとは

IoT(アイ・オー・ティー)とはInternet of Things(インターネット・オブ・スィングス)の略であり、日本語では「モノのインターネット」と訳されます。

従来、インターネットに接続されていなかった様々な「モノ」が、インターネットによって繋がっている状態を指します。
しかし、「モノ」とざっくり解説されても例えばどのようなものかといったイメージが沸きづらいかもしれません。

ここでいう「モノ」とは世の中にあるありとあらゆるもの、車や電化製品、動物、畑の野菜などを指します。
これらをネットで繋ぐことによって、世の中を便利していこうという考え方です。
最近では「鍵」をインターネットに繋ぎスマホで管理する「スマートロック」というものも出てきましたね。

具体的な役割や事例ついては後に解説していきます。

IoTの歴史

最近話題のIoTですが、この考え方は一体いつ頃に登場してきたのだと思いますか。

実はIoTという考え方は、今に新しく出てきたものではありません。
この用語は、1990年末の企業家であるケビン・アシュトン氏によって生み出されました。

Kevin Ashton

引用元: wikipedia ケビン・アシュトン

彼はマサチューセッツ工科大学に本部を置く国際的な非営利組織、Auto-ID Centerの共同創設者の1人であり、インターネットに「モノ」をリンクさせる方法に関する研究チームの一員でした。
彼によると、「Internet of Things」という表現を初めて使ったのは1999年のプレゼンテーションです。
それ以降、この用語は広がっていきました。

IoTの3つの役割

では、IoTではいったい何ができるようになったのでしょうか?
具体的には以下の3つの役割があります。

  • モノからデータを収集する
  • モノにデータを送る
  • モノを操作する

それでは、順を追って解説していきます。
なお、あなたの理解が進むように、今回はスマートウォッチを具体例に挙げて解説していきたいと思います。

モノからデータを収集する

あなたはスマートウォッチをご存知でしょうか。

スマートウォッチとは、小型のタッチスクリーンとCPUを搭載した、多機能な腕時計型のウェアラブルなデバイスです。
現在ではかなり普及しているため、付けている人も多いかもしれません。
有名なところで言うと、Apple Watchが挙げられます。

Apple Watch Series 4

引用元: Apple Watch Series 4

※ Apple Watchはスマートウォッチの中ではかなりハイエンドなものになりますが、現在ではある程度高性能なものでも3000円台から買うことができます。

こういったデバイスは時計の機能はもちろんのこと、心拍数や歩数の計測、睡眠状態、移動距離などを計ることができます。

このような様々なものを測定できるのは、デバイスに備わっているセンサーのおかげです。
センサーには例えば、心拍数を測定できる心拍センサー、歩数や移動速度を測定できる加速度センサー、自分の現在地を把握できる衛星利用測位システム(GPS)などがあります。

これらの機能の精度が向上したことにより、より正確で多くの情報を集めることができるようになりました。
集められたデータは次の「モノにデータを送る」ことへと繋がっていきます。

モノにデータを送る

様々なセンサーやGPSで集められたデータは別の場所に送ることができます。
そして、そのデータを別のデバイスで確認したり、そのまま保有したりすることができます。

このデータを他の場所に飛ばすというのはデータの閲覧性を高めることはもちろんのこと、結果を解析して他のことに使用できるメリットがあります。

例えば、自分の健康状態や運動習慣が可視化され、それがデータとして毎日蓄積されていれば、ユーザーは生活習慣を見直すきっかけにすることもできます。
また、そのデータを集めることによって、企業は新しいサービスを開発することに繋げていくことができます。

データを扱うことで、より個人のニーズに細かくマッチしたパーソナルなサービスを提供することができるようになるのです。

モノを操作する

また、送られたデータをもとにモノ自体の操作を行うこともできます。

例えば、スマートウォッチから得られた心拍数のデータをもとに解析をして、運動しているときに心拍数が上がりすぎているのであれば振動することでユーザーに通知することができます。
また、座っている状態が長いとスマートウォッチが振動して、運動した方が良いと教えてくれる機能もあります。

このようにIoTではデータの送受信だけでなく、そのモノ自体の機能性を向上させる効果もあります。

なぜIoTが伸びているのか?

このような役割があるIoTですが、なぜ近年ではこんなにも普及が進んでおり注目されているのでしょうか。
以下の3つの要因があると考えられています。

  1. IoT関連技術の向上
  2. 市場の飽和と技術が枯れた事
  3. 社会での必要性

これらを順を追って解説していきます。

IoT関連技術の向上

情報技術(IT)分野では「ムーアの法則」というものがあります。
これはインテルの創始者の1人であるゴードン・ムーアが述べた理論で、「半導体の集積率は18か月で2倍になる」という経験則です。

Moore's Law

引用元: Wikipedia ムーアの法則

この法則にもあるようにプロセッサーの機能がここ数年で目まぐるしく向上しました。
また、小型化も非常に進み、高機能なCPUがいろんなデバイスに組み込みやすくなりました。
そのおかげで上記のスマートウォッチのようなデバイスが開発され、携帯性も高いので普及したのではないかと考えられています。

市場の飽和と技術が枯れた事

一昔前まではIoTとしてスマートフォンの市場がかなり伸びていましたが、現在その市場は成熟してしまっています。
また、その性能自体も頭打ちになっています。

世界のIoTデバイス数の動向をみると、2017年時点で稼働数が多いのはスマートフォンや通信機器などの「通信」が挙げられる。

ただ、それらは市場が成熟しているため、今後は、相対的に低成長が見込まれる。

総務省: 第1節 世界と日本のICT市場の動向

このことからスマートフォンで使用されてきた技術が、他のデバイスに反映されることによってIoTが進んできていると考えられます。

1つ前の話でIoT関連技術が向上したことに触れました。
しかし、一般的には最先端の技術は以下の2つの理由によりなかなか普及しません。

  • 技術が尖っていて実際に使える状態になっていない。
  • 高価で普及できない。

つまり技術が枯れて実用性が上がり、値段が下がっていくことが普及する際の条件となります。
IoT関連技術自体は昔からあり、それらが現在は使える状態まできたということです。

社会での必要性

日本では少子高齢化が進み、働ける人の数自体がどんどん少なくなってる状態です。
以下の図は過去の人口推移と将来の推計が示しています。

2053年には1億人を割って9,924万人となり、2065年には8,808万人になると推計されています。

高齢化の推移と将来推計

引用元: 平成30年版高齢社会白書

こういった労働者の人口が減り続ける一方で、公共の設備(橋、道路、トンネル、その他建築物など)もどんどん古くなって改修が必要になってきます。
しかし今までの手法では、人手が減少していくため、この改修や新しい設備を立てることが困難です。

そこで今まで人が行ってきた設備の点検を、機械に任せようと言う動きが高まってきています。
例えば、橋に取り付けるセンサーを開発し、振動などのデータから改修が必要かどうかを判断するようなシステムが既に実用化されています。

人出が少ないことをどのようにカバーしていくかの1つの選択肢として、この設備のIoT化があるということです。

IoTはどこで使われているのか?

ここまでIoTがどのような役割を果たしているかを解説してきました。

特にIT分野の目まぐるしい進歩の中、何かとテクノロジー(Technology)を組み合わせた 〇〇Techと呼ばれる造語がたくさん生まれています。
その中で医療・交通・農業の3つの分野について事例を紹介していきます。

医療

医療現場ではIoMT(Internet of Medical Things: インターネット・オブ・メディカル・スィングス)と呼ばれる別の用語が存在し、非常に注目されています。
その中から3つ例を紹介します。

患者にウェアラブル端末を装着し、リアルタイムで体内情報をチェックする。

IoMT

引用元: サイプレス、ポータブル医療機器やウェアラブル、IoTデバイス向けの超低消費電力データロギング ソリューションを発表

通常、患者の情報を得るためには、血圧計や心電計などの特殊な医療機器を使用する場合があります。
そのため、病院に計測してもらう必要があり、時間的なブランクが生じたり、測定への手間がかかっていました。

しかし、上記で紹介したスマートウォッチ等のウェアラブル端末を患者自身に装着しておけば、リアルタイムで血圧や体温、血糖値、心電図のデータを得ることができます。

治療アプリとの連携

上記のウェアラブル端末の情報を治療アプリと連携させることで、問診の手間が省けたり、問診自体では気が付かない疾患に気づけるかもしれません。

また、ユーザーは自分で病気の可能性が分かるので、病院で早めに受診し大きな病気の予防に繋げることもできるかもしれません。
国の医療費での問題が騒がれている今、自分の健康を自分で管理するセルフメディケーションでの応用は非常に注目の高い分野です。

ベッドのIoT化

人手不足は医療業界でも深刻な問題になっています。
そこで人員削減のために、ベッドをIoT化しようという動きが進んでいます。

ベッドに内蔵されているセンサーから患者の寝返りの程度などを把握することができ、床ずれなどの深刻な状態になる前に防止することができます。
ただし、医療に応用していくためには問題点を解決していく必要があります。
具体的な話はIoTの問題点で少し触れておきます。

交通

この分野ではタクシー業界で既に実用化が進んでいます。

AndonLabo

引用元: JapanTaxiのタクシーIoT事業を支えるハードウェア開発の現場を紹介!タクシーで目にするあの製品を作ってます

例えば、高齢者や小児に電波を受け取ることのできるキーホルダーを持たせることで位置情報履歴を、家族や保護者などがスマートフォンやパソコンで把握することができます。
また、あらかじめ登録した場所を通過した場合に、通知を受けることができます。

タクシーを活用したIoT見守りサービスについて: 全国最大、約4,100台のタクシーの「動く基地局」化を実現

また人工知能(AI)と組み合わせることで、どこに行けばタクシーで利用者を拾いやすいかをリアルタイムで予測するシステムを搭載したタクシーも既に運用されています。

-AI×IoTでリアルタイムに乗車需要を予測し、お客さまの利便性とタクシー業務の生産性を向上-

農業

デジタル化とは一見関係のなさそうな、この農業においてもIoT化が進んでいます。

AgriTec

引用元: SMART AGRI

生産物の生育状況や病気、日照などの状況ごとの環境データを収集し、野菜の収穫量や時期を予測することができます。
この分野も既に海外では、導入が進んでいます。

ベンチャー企業のFamLogs社では、衛星画像から収集した土壌や農作物の状態を、蓄積したデータと照らし合わせて分析することで、土壌の状態に合わせた適切な作付量や肥料の分量などを農家に情報提供しているようです。

世界のスマート農業成功事例に学ぶ 〜アメリカ、オランダの例

IoTの問題点

こんなに便利なIoTですが、現状でも様々な問題点があります。
最後に少し触れておきたいと思います。

そのデータは誰のものか?

GPSによる位置情報やウェアラブル端末から得られるデータは個人情報です。
それらの情報は誰のものなのでしょうか。

個人のものなのか、データを収集する企業のものなのか、端末を開発した企業のものなのか、国のものなのかを明確にしなければ責任の所在がはっきりとしません。
重大な個人情報に扱うに当たっては、その情報を誰がどのように管理していくかが非常に重要な課題です。

機械の安定性

特に医療の分野では、医療機器が壊れてしまうことは死活問題です。
緊急を要する場面で、正確なデータを入手できない場合は、患者の生命に直結してしまう可能性があります。

機械の耐久性やシステムのメンテナンスを継続的に行っていかなければなりません。

導入コスト

IoT化を導入するためには、その分野の機械化が必須です。
IT産業が発達している今でも、この機械化が進んでいない業界(農業や医療など)も存在します。

そこに対して、1からIoTを導入しようとすると莫大なコストがかかってしまいます。

まとめ

今回は、IoTがどういうものなのか、なぜ今注目されているのか、何に使われているかを事例を交えながら解説しました。

IoTはビッグデータといった分野とも非常に関連性が高く、身近なハードウェアをデジタルと融合させることによって今後新たなビジネスモデルが無数に生まれていきます。

また、IoTは今では個人でもシステムを作ることができます。
「Raspberry Pi」などの市販のマイコン(マイクロコンピュータ)キットなどを使って、簡単に試作システムをつくることもできるため、そこからビジネスとして資金調達に繋がることもあります。

参入のハードルはかなり低いのでぜひ今後チャレンジしてみてください。


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